ピエフォーコイン:定義から歴史、収集のポイントまで解説​

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ピエフォーコイン:定義から歴史、収集のポイントまで解説​

Glowing gold coin in fiery embers.


コインは、様々な製法、仕様で製造され、今回取り上げるのは、
「ピエフォー(piedfort)」と呼ばれるコインについてです。通常のコインとは
異なる厚みと重み、そしてそれらにまつわる情報について、多面的に、情報を
集め、整理し、ピエフォーコインの定義から語源、歴史的背景、特徴、希少性、
収集のポイント、そして世界的に知られる事例まで、情報提供致します。

●ピエフォーコインの定義と語源:ずっしりとした足跡
ピエフォーコインとは、一般的に同種同額面の通常のコインと比較して、
著しく厚く、そして重量のあるコインを指します。その特徴的な外観から、
特別な存在感を示しています。多くの場合、通常のコインの約2倍の厚さと
重量を持つとされています。これらのコインは、日常的な流通を目的として
製造されたものではなく、特別な目的のために作られました。  

この独特なコインの名前「ピエフォー」は、フランス語に由来します。
「pied」は「足」を意味し、「fort」は「強い」「偉大な」「重い」といった意味を持ち、
両者が合成された言葉です。
piedは、pedal(自転車のペダル)、pedestrian(歩行者)、pedicure(足のお手入れ)、
fortは、fort(要塞)、comfort(快適さ=共に強くする)、effort(努力=外に強さを出す)、
語源から、上記、同根の言葉が見られます。

文字通りに訳すと「重い足」となりますが、 貨幣学においては、「重い重量」「重い尺度」と
いった意味合いで解釈されています。ここは私見ですが、「pied」は解釈が飛んだ重量でも
尺度の意味でもなく、人間の足は、体の土台、基礎であり、重い土台、重い基礎、
置かれたピエフォーコインがまさにその様子を呈しているためではないかと思うところです。

そのピエフォーコインは、初めは、2語で構成された言葉であり、18世紀のフランスの
百科事典では、「pied fort」と2語で記録されており、通常の通貨よりも厚い金、銀、
またはその他の金属のコインとして定義されていました。現代の「piedfort」という合成語は、
1802年に英語のサザビーズのオークションカタログに登場しており、当時すでに広く
使用されていました。

ピエフォーは、書かれている文字が読まれない、黙字が多いフランス語を語源としているため、
理解し得ないdを落として「piefort」と書かれるスペルミスも頻発し、100年以上前から
スペルミスでも使用されており、一部の権威あるコインカタログでも見られることがあります。

●歴史を物語る厚み:ピエフォーコインが作られた目的
ピエフォーコインが最初に記録されたのは、中世のフランスとイギリスであり、フランスでは
12世紀にその起源を見ることができます。これらの特別なコインが通常のコインよりも厚く
製造された背景には、いくつかの目的があったと考えられています。  

初期のピエフォーコインの主な目的の一つとして、版下(パターン)としての利用が挙げられます。
当時、コインは国内の各地にある地方の造幣局で製造されていました。新しいデザインのコインが
発行される際、中央の造幣局で作成されたピエフォーコインは、そのデザインの見本として各地の
造幣局に送られ、地方の彫刻家や職人がそれを参考に標準的な厚さと重量のコインを製造したと
考えられています。厚みを持たせることで、流通用のコインと誤って使用されるのを防ぐ役割も
果たしました。イギリスでは、この目的でのピエフォーコインの製造は16世紀に終わり、現存する
最後の例は1588年に製造された6ペンス硬貨です。  

また、ピエフォーコインは、贈答品や権威の象徴としても用いられました。16世紀中頃から
17世紀にかけて、ヨーロッパの支配者たちは、来訪する高官や宮廷の成員にピエフォーコインを
贈る習慣を始めました。君主や貴族の中には、自身の富と権力を示すために、特に厚いコインを
製造させ、それを展示したり贈答品としたりする者もいました。この贈答の習慣は18世紀には
衰退したようです。  

そのピエフォーコインは高い希少性から、フランスでは1355年以降、
「droit de pied fort(ピエフォーの権利)」と呼ばれる、新しいコインのデザインのピエフォー版を
受け取る資格のある者を定める正式な規則が設けられました。​この規則はフランス全土に適用される
規則でありましたが、王族、貴族、高位聖職者などの特定の高位者だけが受け取れる規則であり、
当時、高位者の間でも奪い合いが発生していたと思われます。

19世紀になると、フランスのパリ造幣局(Monnaie de Paris)は、熱心なコレクターの需要に
応えるために、近代的なピエフォーコインの製造を定期的に再開しました。イギリスの
ロイヤルミントが一般向けに近代的なピエフォーコインを製造したのは1980年代になってからです。  

●一般的なコインとの違い:厚みと重みに宿る特別感
ピエフォーコインは、一般的なコインと比較して、その物理的な特性に明確な違いが見られます。

最も顕著な特徴は、厚さです。ピエフォーコインは、同額面の通常のコインの約2倍の厚みを
持つことが一般的です。この厚みは、手に取った際にずっしりとした感触を与えます。  

厚みに比例して、重量も通常のコインの約2倍になることが一般的です。これは、多くの場合、
ピエフォーコインが通常のコインの2倍の貴金属を含むことに起因します。  

材質に関しては、歴史的なピエフォーコインは銀や金で製造されることが多く ,近代のものでは
プラチナが用いられることもあります。  

デザインは、一般的に同額面の通常のコインと同一の直径とデザインを持ち、同じ刻印型を使用して
製造されます。  

仕上がりは、通常の流通コインよりも高品質であることが多く、プルーフコインのように細部まで
鮮明に表現されています。  

縁(エッジ)に関しては、ギザギザの刻み目(reeded edge)もプレーンエッジ(plain edge)を
持つものも存在します。また、縁には「PIEDFORT」や「DOUBLE THICKNESS」といった特別な
文字が刻印されている場合もあります。  

これらの違いから、ピエフォーコインが特別な意図を持って製造された希少な存在であることが
分かります。

●希少性と価値:市場における評価
ピエフォーコインは、一般的に製造枚数が非常に少ないため、希少性が高いことで知られています。
この希少性の高さが、市場におけるピエフォーコインの価値を大きく左右します。コレクターは、
その優れた品質と希少性から、常にピエフォーコインを求めており ,特に保存状態の良いものや、
歴史的に重要な出来事を記念して発行されたものなどは、高額で取引されることがあります。  

実際に、オークションにおける取引事例を見てみると、その価値の高さが伺えます。例えば、
ナポレオン3世100フラン・ピエフォー金貨(フランス)、
アンリ5世5フラン・ピエフォー金貨(フランス)、
アンリ2世アンリドール(全通貨単位)・ピエフォー金貨(フランス)、
これらは、オークションで高額落札されています。

ピエフォーコインの価値を左右する要因として、製造枚数(希少性)、保存状態、歴史的な意義、
そして素材の貴金属としての価値などが挙げられます。特に、初期のピエフォーコインや、
歴史的な出来事を記念して発行されたもの、そして金やプラチナなどの貴金属で作られたものは、
より高い価値を持つ傾向があります。  

●コレクターにとってのピエフォーコイン:収集のポイントと注意点
ピエフォーコインの収集には、他のコインにはない特徴があります。その一つは、歴史的な意義です。
初期のピエフォーコインは、造幣技術の発展や、権力者の意向を伝えるための重要な役割を
担っていました。また、贈答品として用いられた歴史を持つものは、当時の社会や文化を反映する
貴重な資料となります。

さらに、ピエフォーコインは、高い技術力のある職人の技によって製造されています。
特に近代のものは、プルーフ仕上げのような高い品質を持つものが多く、その美しいデザインを
際立たせています。また、通常のコインよりも厚みと重みがあるため、手に取った際の触覚的な
特徴も特別です。  

ピエフォーコインの収集を始めるにあたっては、特定の時代や地域、あるいはテーマを決めて
収集するのも良いでしょう。例えば、フランスのピエフォーコインに特化したり、近代のイギリスの
記念ピエフォーコインを集めたりするなど、自分の興味に合わせてコレクションを深めていくことが
できます。多くの近代ピエフォーコインには、証明書や特製ケースが付属しているため、これらも
コレクションの価値を高める要素となります。  

●世界に名を刻むピエフォーコイン:歴史的な事例
歴史を通じて、数多くの興味深いピエフォーコインが製造されてきました。その中でも特に有名な
事例をいくつか紹介しましょう。

12世紀にフランスで始まったとされるピエフォーコインの中でも、フィリップ・オーギュスト王の
時代のものは初期の重要な例として挙げられます。イギリスでは、エドワード1世の治世に製造された
厚い銀貨が初期のピエフォーコインとして知られています。また、版下としての役割を終えた最後の
イギリスのピエフォーコインとされる、1588年の6ペンス硬貨も特筆すべき事例です。  

ルネサンス期には、ヘンリー7世のダブルリヤル金貨が、初期のイギリスのピエフォーソブリンとして
知られています。フランスでは、ルイ14世の1643年のダブルルイドール金貨のピエフォーも
現存しています。  

また、現代においても、ロイヤルミントやパリ造幣局をはじめとする各国の造幣局が、
記念コインとしてピエフォーコインを発行しており、そのデザインや歴史的背景は
コレクターにとって重要な要素となっています。例えば、イギリスでは1973年の
EEC加盟記念50ペンス銀貨や、近年では様々なテーマのソブリン金貨のピエフォー版などが
発行されています。  

●結論:ピエフォーコインの奥深い世界
ピエフォーコインは、独特の厚みと重みだけでなく、歴史と多様な目的を持つ特別なコインです。
版下としての役割から、権威の象徴、そして現代のコレクターズアイテムへと変化してきた
ピエフォーコインは、コイン収集の世界において独自の地位を確立しています。その希少性と
歴史的背景を知ることで、さらに関心が湧いてくるでしょう。

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