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価値あるコレクションの処分リスク
長年にわたって収集されたアンティークコインの真の価値を家族が理解していないケースは少なくありません。
2019年、東京都内では遺品整理業者によって誤って処分された明治時代の金貨コレクションが
推定1億2000万円相当だったことが判明しました。遺族は価値を認識せず、遺品整理業者も専門知識がなかったため、
一般的な古物として買取業者に持ち込みました。買取業者は明らかにコインの価値を認識しながらも、
市場価値を大幅に下回る金額で買い取り、その後コインを個別に高値で転売しました。遺族が事態に気づいた時には
コレクションは散逸して取り戻せなくなっていました。
コインコレクション相続の特有課題
○専門性の高い評価 – アンティークコインの正確な評価には民間の業界団体である日本貨幣商協同組合や
日本古銭協会認定の鑑定人による専門的査定が必要です。相続税評価においては税務当局は
原則としてこれらの専門家や主要オークションハウスによる評価書を参考資料として認めています。
○コレクションの一体性 – 分割すると価値が著しく下落します。
○財産認識の欠如 – 相続手続きから漏れる事例が多いです。
○家族間の認識の相違 – 価値に対する理解の差が争いの原因となります
管理信託という選択肢
日本では以下の機関がアンティークコインを含む貴重品コレクションの管理信託に対応しています。
○三井住友信託銀行「動産の管理信託」
○みずほ信託銀行「財産管理信託」
○日本貨幣商協同組合の提携信託サービス
○専門美術品保管会社(アートストレージ)
これらは専門的評価、適切な保管管理、相続時の分配売却代行、専門知識の教育支援などを提供します。
ただし最低信託金額が1,000万円以上のことが多いです。小規模なコレクションでは公正証書作成と専門鑑定書の取得を
組み合わせる方法が現実的です。
効果的な相続税対策
○計画的な生前贈与 – 年間110万円の基礎控除を利用した段階的な贈与
○文化財保護法に基づく特例の可能性 – 特に歴史的価値の高いコインが「登録有形文化財」として認められた場合、
相続税の軽減措置が適用される可能性があります。
(ただし一般的なアンティークコインでは適用は稀です)
○公共機関への寄贈による非課税措置 – 国立博物館等への寄贈で相続税が非課税となる特例があります。
実践的なアクションプラン
○コレクション台帳の整備 – 詳細情報、購入記録、鑑定書等を体系的に整理
○家族への知識共有 – 定期的に家族に価値や特徴について教育する
○専門家ネットワークの構築 – 相談可能な鑑定人や専門家を事前に紹介
○専門機関との信託契約の検討 – 適切な管理を確保する契約
○詳細な付属文書付き遺言書の作成 – 法的効力のある遺言書と詳細指示書
先述の1億円相当コレクション損失事例では、故人がコレクションの目録と鑑定書を作成していたものの、
別の場所に保管していたため遺族が発見できませんでした。リストだけでなく、その保管場所や確認方法も
共有しておくことが重要です。
収集の経緯と意義の継承
アンティークコインの真の価値は金銭的なものだけではありません。各コインには歴史があり、収集した理由があります。
相続の本質はそうした収集の経緯と意義を次世代に伝えることにあります。コレクションに込められた専門知識や
価値観を伝えることで、相続人はその価値を正しく認識し、適切に取り扱う意志を持つことができます。
内部リンク
貸金庫窃取の三菱UFJ銀行とアンティークコイン
貸金庫窃取のみずほ銀行とアンティークコイン
外部リンク